1. グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)の至言
私たちは”あなた方を見張っている”ということを伝えたい。
そもそも、すべてが間違っているのです。
私はここにいるべきではありません。
私は海の反対側で、学校に通っているべきなのです。
あなた方は、私たち若者に希望を託そうとします。
よく、そんなことが言えますね。
あなた方は空っぽの言葉で私の夢、子供として過ごす時間を奪ったのに。
それでも私は幸運な1人です。
人々は苦しんでいます。
(次々と)人々は死んでいます。
生態系は崩壊しつつあります。
私たちは大量絶滅の始まりにいるのです。それなのにあなた方(大人たち)は、お金のこと、永遠の経済成長という「おとぎ話」ばかり。
よく、そんなことが言えますね。〜
今後10年間で(温室効果ガスの)排出量を半分にしようという、一般的な考え方があります。
しかし、そうしたとしても世界の気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は50%しかありません。〜
しかし、この数字は、「ティッピング・ポイント」や、変化が変化を呼ぶ連鎖、有毒な大気汚染に隠されたさらなる温暖化、公平性や「気候正義」という側面が含まれていません。
この数字は、私たちの世代が、何千億トンもの二酸化炭素を今は存在すらしない技術で吸収することをあてにしているのです。
私たちには、50%のリスクというのは決して受け入れられません。
その結果と生きていかなくてはいけないのは私たち(世代)なのです。IPCCが出した最もよい試算では、気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は67%となっています。
しかし、それを実現しようとしたら、さかのぼって2018年1月1日から数えて、あと420ギガトンの二酸化炭素しか放出できないという計算になります。
今日、この数字は、すでに350ギガトン未満と書き換えられています。
これまでと同じように取り組んでいれば問題は解決できるとか、何らかの技術が解決してくれるとか、よくそんなふりをすることができますね。
今の放出のレベルのままでは、あと8年半たたないうちに許容できる二酸化炭素の放出量を超えてしまいます。
今日、これらの数値に沿った解決策や計画は全くありません。
なぜなら、これらの数値はあなたたち(大人)にとってあまりにも受け入れがたく、そのことをありのままに伝えられるほどあなたたちは大人になっていないからです。私たちを裏切るのなら、私は言います。
あなたたちを絶対に許さない。この問題から逃れることは許しません。
「いま(この瞬間)」「ここ」で線を引きます。世界は目を覚ましています(気がついています)。
あなた方(大人)が好むと好まざるに関係なく、変化はやってきています。
9/23国連の「気候行動サミット」に出席した時のスピーチより
私の脳は、多少人と異なっていて、物事を白か黒で捉えています。
気候変動の進行は「黒」
『ガーディアン』紙のインタビュー(2019/1/14)より
「アスペルガーは病気ではなく、1つの才能。
自身のフェイスブックでの書き込みより
アスペルガーじゃなかったら、立ち上がることはなかったでしょう」
アスペルガーだったからこそ、人と違った視点で世界が見れるのだと思います。
スウェーデンのTV「Skavlan」より
もし私がアスペルガーじゃなかったら、こんな風に世界を『外側から』見れなかったでしょう
2. グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)という傑物
9/23国連の『気候行動サミット』での4分26秒のスピーチを見た。
あまりにも感銘を受けたので急遽、16歳の傑物を書く。
どうしても書かずにはいられない。
スエーデン人の16歳、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さんが、
2018年8月からスウェーデン議会前でたった一人の座り込み抗議活動を始めた。
それ以来、毎週金曜日は学校を休み温暖化対策を訴える抗議行動を続けた。
これにより「未来への金曜日」と呼ばれるようになる。
この行動が瞬く間に世界へ拡散し、各国の若者中心に行動を促すこととなった。
「#FridayForFuture 」というハッシュタグによって。
2018年12月にはCOP24(国連気候会議)、
2019年1月にはダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)にてもスピーチをした。
自身のフェイスブックでは自身がアスペルゲンガー症候群であることまでも公表してる。
私はそんなことを公表する必要はないと感じたけれども、
しかし、グレタさん自身がフェイスブックやインタビューで障害との向き合いについてもとても冷静に捉えていることが分かる。
単純に「聡明」「勇気がある」などと受け取れるもんじゃない。
16歳にして傑物以外の何物でもない。
3. 至言を味わう
「How Dare You」〜よくも(いけしゃあしゃあと)そんなことが言えるもんだ〜、
を連発したグレタさんの言葉は、単なるスピーチではなく、
怒りそのままだった。
気温が1.5度上昇するだけでこの星はあと8〜10年しか持たないかもしれない。
それなのに、責任ある大人たちは目を背け、否定をしてさえみせる。
地球の気温上昇が1.5度を超えると、「後戻りできない」事態になると科学者達が警告を発している。
・氷河がすべて溶け出し、
・メタンガスが発生し、
・アマゾンの熱帯雨林が消滅する
・「100年に一度の」とこの頃、毎年のように指摘される災害級の台風、大洪水などが頻発するようになるという
世界一、二酸化炭素を排出している中国は都合が悪い話題になると「いまだ我が国は発展途上だから」と逃げ、
第2位のアメリカはトランプがパリ協定から離脱してしまい、
日本は第5位の排出量だ。
今回の国連に出席した人気の新任環境大臣が日に日に化けの皮が剥がれていくのと対照的に、グレタさんの言動にブレがない。
地球温暖化に対して概ねヨーロッパ諸国は前向きだが、中国、アメリカ、インドという巨大な人口を抱える国は後ろ向きだ。
後ろ向きの理由は、ただ
「自国だけが犠牲になりたくない」
「自国だけは経済発展をし続けたい」というエゴそのものだ。
そのエゴの所有者は国民なのか?
そうではなくそういった国の為政者、権力者、利権を手離さない「大人」たちに他ならない。
気候温暖化が留まることを知らぬ資本主義のツケであることは言うまでもないが、温暖化に限らず、貧困、戦争、原発、虐め、差別など人間が起こしてきた諸問題はすべてが、為政者、権力者、利権を手離さない「大人」たちの「都合」「立場」から決定、推進されてきた事柄のツケであることは歴史が証明している。
問題を議論する科学者ほかが真っ当なデータ、考察を提出しても国家を運営する為政者、権力者、利権を手離さない「大人」たちはその資料を読む気にもならないだろう。
彼らは「本当にそんな事態になるのなら」その途方もない財力と権力を駆使し、自分と自分の家族たちだけで他の星へ移住してしまうことを選択するだろうから。
その準備の方は、着々と進めているのじゃないか。
映画『ゴッドファーザー』で、三男のマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノが演じた)は学生時代に父のマフィア稼業に反発し自ら戦地へ志願した。
しかし長男が殺され、自分が次代のドンに任命されると段々とファミリーを維持していくためにモンスター化していく。
身内の次男に裏切られ、殺害を命じ、長女とも心は通わない。ついに最愛の妻にも去られてしまった。
若き頃に思った純粋な気持ちを
「大人になれよ」
「うまくやれ」
「噓も方便」
「組織を守るため」
と幾つもの自己弁護が身に付き始め、人はブヨブヨした醜い生き物に変貌していく。
誰にでも些少の欲はあり、それを完全否定することは出来ない。
綺麗事だけでは生きていけないのは「弱肉強食」、人間のみならず生態系の摂理だ。
それにしても、人間は欲望だけの生き物なのか?
情、思考、知性、知恵、そいったものを獲得した最高存在じゃなかったのか?
自分たちの欲に負け、そこまでの欲を享受できなくとも見てみないふりで加担した一部の責任ある立場の者どもがこの星を滅ぼしていくことを、
ただ口を開けて、「あらら」と見ていることしか出来ないのだろうか?
いや、そんな「大人」たちに任せておけないと若者たちは動き始めたみたいだ。
この国では悲しいかな、あまり実感を伴って受け止める人が(相変わらず)多くはないようだけれども。
今回、この国連へ出席するための移動も温室効果ガスを排出する飛行機ではなくヨットで15日間海を渡って開催地ニューヨークに到着した。
至言とは「白か黒」かの領域でしか見えてこないものなのかもしれない。
問題への解はいつも至ってシンプルな筈だ。
解がそこにあるのに、知っているのに、わざわざそれを見ずして、否定してみせてまで守ろうとする大人たちとはなんぞや?
グレタさんの気候行動サミット出席に併せ、世界150カ国以上でも集会が開催された。
テレビでもロンドン、ベルリン、ハンブルグ、リマ、東京などで若者中心にデモ、集会の模様が映された。
味わうもなにも、グレタさんの言葉、行動は既に世界中の人間の心に突き刺さっている。
4. それから
これまでもこの地球上の歴史は、たった一人の偉人の思いが変えてきた。
一人の偉人の思いはしばしば「奇人」「変人」扱いされ、排除されがちだ。
一徹の思いを持ち続け、排除され、孤立しても思いを達成することができた人だけが偉人となる。
エジソン、ベル、ダ・ヴィンチ、ベートーヴェン、ミケランジェロ、ゴッホ、ニュートン、ガンジー、釈迦、アインシュタイン、、、スティーブ・ジョブス、
日本人は勤勉で優しい国民だと言われる。
それが奇跡的な戦後復興を遂げた要因なのだ、と。
しかしその指摘が有効な時代はもう過去のことだ。
その過去の上に胡座をかき、向かうべき明確な目標のない国家戦略はすべて米国の属国として、また多方面への右近左眄する八方美人外交により、対処療法的に運営されているだけというのが現実だ。
平均寿命の記録ばかりを誇るが、高齢者が安全、健康に暮らせる年金、保険制度の崩壊が間近で、政治家は俗世を知らぬ世襲議員が大半を占め、高級官僚は政治家に忖度し自分の行く先の天下り先用に利権を維持することに汲々としている。
マイケル・ノウルズというアメリカの評論家は米FOXの番組(トランプ大統領に近いテレビ局とされる)で、グレタさんについて「精神的に病んでいる。両親や国際的な左翼に利用されている」などコメントをした。
FOXはこの発言を受け「ノウルズ氏のコメントは不見識なもの」と謝罪する事態となった。
環境ヒステリー、両親の影響と退けたい大人たちによる批評、非難にもグレタさんはもう慣れっこなのだろう。
歯牙にもかけない。
そう、傑物と利権にしがみつくみっともない大人。
人間としての勝負はついている。
しかしながら、得てしてこの世は偉人が幸福に人生を全うするようにできていないみたいだ。
これから若き傑物が投じた必死の言動が、この星をどう変えていくのか?
なにも変わらないまま滅んでいくのか?
すべてこの星の住民に等しく突きつけられた問題だ。
目を逸らすことは出来ない。
グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)
2003/1/3-(現在16歳)
環境運動家、学生
(波尾哲)