傑物の至言-16 武満徹

「音楽を作る時に形というものには興味がない。心理的に音を聴いて、心象的なものを作りたい」武満徹の至言

日本の楽器はひとつの音でも意味深く、多義的で、西洋音楽のように単純ではない。西洋音楽はどんどん単純化する、ピュアに、綺麗にしていく。尺八の良さはそれと正反対。西洋の音楽が整合性をもった美しいものだとすれば、日本の楽器は整合性が整っていない、自然の雑音とかそういうものに近い。音楽を作る時に形というもの(ソナタとかロンドなどの形式。主題とか展開とか)には興味がない。心理的に音を聴いて、それで必ずしも視覚とは言わないけれど、心象的なものを作りたい。

『武満徹 自らを語る』より

ブライアン・イーノの顔を初めて見た時、武満徹を想った。

顔そのものが似ているというよりも、脳みそがぎっしり詰まったような額が印象的だ。

ピアノを買えなかったので、ボール紙で作った紙ピアノ(折りたたみ式で白鍵と黒鍵を貼っていた)をいくつも作って、指を動かしていた。

なんと!

その後ピアノはプレゼントされたらしい。

ほぼ独学で現在の東京藝術大学に入学。

皆んなの好きはジャンル分けをすれば「現代音楽」「実験的」な音楽なので最初は認められず、苦労したみたいだが、来日したストラヴィンスキーがラジオで聴いて評価し、一気に「世界のタケミツ」へ昇っていく。

天才は必ず発見される、とも言えるし、逆輸入コンプレックスの構造がこの国にはいつもつきまとっている、と少し哀しい。

1962年『切腹』小林正樹監督

1964年『砂の女』勅使河原宏監督

などの音楽で強烈な厳しさを奏でた。

あまりにも音楽が印象的でこの人、誰?

と想ったものだ。

70年代にラジオで話していたことや、著書に触れ一気にこの巨人に魅了された。

武満徹は著作も多く、その言葉は文芸系から出てこないものが多く、ハッとさせられる。

日本古来の尺八、琴などを使いながら、その音楽はこの国のスケールより遥かにデカい。

1967年 小澤 征爾が初演した『November Steps (ノヴェンバー・ステップス)』を始め、武満の曲はいまでも各国の指揮者からよく演奏されている。

武満徹

1930/10/8-1996/2/20 (享年65歳)

作曲家、文筆家

武満徹 響きの海へ武満徹 響きの海へ

 作者:船山隆

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『けだし名言』

ただの名言、格言、金言じゃなく、本質に迫る言葉が『至言』。

ただの有名人、著名人じゃなく、怪物級、規格外の人物が『傑物』。

その『傑物』の『至言』が放たれた奥底に迫りたい。