俺は音楽の世界で既成概念とされてる現状を、そのまま受け容れる気はないんだよ。Spotifyを使ってる連中が聴いているのは、元々の音源の5%以下、せいぜい3%ちょっとだ。それ以外のところはまっすぐゴミ箱行きなんだぜ。まるでサウンドの表面的な部分だけを撫でて終わりみたいじゃないか。 音楽は俺の生命なんだ。今の世の中でみんなが当たり前みたいに金を払って掴まされてるゴミと同じものなんか聴いてられないし、自分までそっち側に組み込まれるなんて真っ平だね。だから俺は一度ストリーミングから自分の作品を全部引き揚げたし、多分この先またそうする時が来るだろう。 『ロッキング・オン』2018年6月号より
怒れるカナダ人Neil Young。
70過ぎてもまだまだ怒ってる。
ロック・ミュージッシャンだろ、当たり前だ。そうこなくちゃ。
こういうことを大御所に言われるとデジタル化の変革に乗り切れない業界の大人達は「せっかくストリーミングで凌ごうとしてたのに、余計なことを言ってくれるなよ」と思うか、
あるいは「いくら有名でもNeil Youngが稼ぐ数字なんてものの数じゃない。頑固ジジイには勝手に言わせておけばいいさ。時代はもうこっちに流れてるんだ」と嘯くか。
CSN&Y(Crosby, Stills, Nash & Young=クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング)でも、
いつもCSN+Y(Crosby, Stills, Nash plus Young)に見える。
CSNはバランスが取れた3人組だが、そこにNeil Youngが加わると、3人とは違う化学変化が発生する。
CSN&Yで最も好きな曲、『Ohio(オハイオ)』はNeil Youngが1970/5/4のケント州立大学銃撃事件(オハイオ州ケント州立大で米軍のカンボジア空爆への抗議行動をしたの学生4人が州兵に射殺された)の報道写真を見てたった何十分かで書き上げ、
1970/5/21にレコーディングされ、6月にリリース。
Billboardチャートの14位まで上った。
ほとんどがソロでバンドCrazy Horseを従え、吠え続ける。
1972年アルバム『Harvest(ハーヴェスト)』シングル『Heart of Gold(孤独の旅路)』が共に全米1位になったりもしたが、そんなことくらいでこの人を知ったことにはならない。
ライブ映像も必見、Neil Youngの凄まじさが垣間見える。
Kurt Cobain(カート・コバーン)が自殺した時の遺書にNeil Youngの『Hey Hey, My My (Into the Black)(ヘイ・ヘイ、マイ・マイ)』の歌詞から
「It’s better to burn out than to fade away
~だんだんと消えていくくらいなら、燃え尽きてしまうほうがいい~」が引用されたことはあまりにも有名。
親子ほども年の離れたKurt Cobainが綴ったNeil Youngの言葉。Neil YoungはKurt Cobainが陥った窮地を知って連絡しようとしていたともいう。
1995年『ロックの殿堂』入りしたが、その運営に異議を唱え式典への出席を拒否した。
人は歳を取ると温厚になる部分と頑固になる部分があると思うが、ロック・ミュージッシャンが功成り名遂げ、札束を抱いて温厚になってしまえば、せいぜい『ロックの殿堂』入りを勲章に墓に入るだけだ。
ティーンの頃に抱いたロック・ミュージックに向かう視線、姿勢がどんどん頑固になっていけば誰にも割れない岩となる。
先のLou Reedもそうだったし、Neil Youngもまさにそういうミュージシャンだ。
物分かりがいいフリをして若者に好かれたいならさっさとロック・ミュージックから離れちまえばいい。
バリバリ現役
Neil Young(ニール・ヤング)
1945/11/12- 現在73歳
作詞家、作曲家、ギタリスト、ヴォーカリスト
(記*波尾哲)